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おいしさというエール。付き添い入院の親御さんをサポートする「NPO法人キープ・ママ・スマイリング」の想い

NPO法人キープママスマイリング理事長・光原さん

病気で長期の入院生活を送る子どもたち。そのそばには、子どもたちの日常を支える「付き添い家族」の存在があることをご存じでしょうか。子どもと一緒に院内で寝泊まりしながら、身の回りのお世話をするご家族のことです。

 

長期入院となると、幼い子どもであればなおさら、1人で入院生活を送ることは困難。そのため、親御さんが一緒に病室に泊まり込み、付き添う必要があるのです。ですが、付き添う家族は病人ではないため、食事の提供がなかったり、寝る際も簡易ベッドであったりと、十分とは言えない生活環境で過ごさざるを得ないことが現状です。

 

このような、あまり語られることのない付き添い入院の現状を知った私たちアマノフーズ マーケティングチームは、フリーズドライ食品で何かご協力ができないかというご相談とともに、病児に付き添う親御さんたちの生活サポートを行う「NPO法人キープ・ママ・スマイリング」にお話を伺いに行ってまいりました。

 

そこで今回は、「NPO法人キープ・ママ・スマイリング」の理事長である光原ゆきさんに、この取り組みを始めた理由や、これから実現したい未来についてお伺いしたお話を特集します。

 

 

活動のきっかけは、ご自身の実体験から

 

ー 「キープ・ママ・スマイリング」という団体は、ご自身がお子さんの入院に付き添った実体験をきっかけに立ち上げたそうですね。その当時のお話を聞かせていただけますか?

 

光原さん:初めて付き添い入院を経験したのは、長女を出産した36歳の頃です。当時、私は会社員だったので、出産後すぐに復職しようと思っていたのですが、娘は生まれてすぐにICUのある大学病院に搬送されることになって。検査をした結果、手術が必要だと診断されました。

 

幸いにも手術は成功して、数日後に個室へ移れたものの、「お母さんも一緒に泊まってください」と看護師さんから言われたんです。そこから何もわからないまま初めての付き添い入院が始まりました。

 

ー「付き添い入院」は、実際にどのような生活だったのでしょうか。

 

光原さん:子どもの病状の関係で、いくつかの病院を移動することになったのですが、そのほとんどがお母さんは自分で食事を調達しなければならない状況でした。看護師の人手不足もあって、子どもの身の回りのお世話はお母さんが担うことも多くて。ミルクを飲ませたり、排泄物の量を測って看護師に報告したりと、とにかく忙しいんですね。子どもがお昼寝をしている隙にダッシュでコンビニへ走って、1日のご飯をまとめて買って、空いた時間にパパッと食べるという日々でした。

 

病院から簡易ベッドをお借りできましたが、寝返りができないサイズで硬く、出産直後の身体にはこたえました。腰痛を我慢しながら、栄養剤を飲んでひたすら気力で頑張るしかありませんでした。

 

入浴設備がない病院では、近くの銭湯へ行くことになるんですが、子どもから目を離せないのでお風呂に入るのもひと苦労。シャワー設備がある病院もありましたが、20分ごとの予約制だったりするので、予約した時間に急に先生に呼ばれたり子どもが泣いたりすると、入り損ねることも多かったです。

 

写真提供:NPO法人キープ・ママ・スマイリング

 

ー 産後のケアが必要な時期に、その環境はとても過酷だったと思います。その経験から、同じような状況にある親御さんを救いたいという思いで、NPO法人を立ち上げられたのでしょうか。

 

光原さん:そうですね。それに「付き添い入院の環境を良くしたい」という思いもありました。

というのも、私は長女の3年後に次女を産んで、2人合わせて6つくらいの病院を経験しているんですね。そうすると、付き添う家族の食事も、病院へ申請ができるところもありますが、ほとんどのところはないとか、シャワールームがないところもあれば、保育士さんがシャワー中に子どもを見てくれるところもあるとか、病院ごとの違いが見えてくるんです。

 

付き添っている時から「この違いは何とかならないのかな」と思っていましたし、「他を知らない人たちはこの実態さえ把握できていない」とも思いました。なので、「私が各病院の良い部分を共有することで、付き添い入院の環境を底上げできれば」と、設立に至った次第です。

 

ただ、大きなきっかけは次女の病気だったと思います。じつは、次女はお腹にいる時から難しい病気があることがわかっていたので、出産する前から付き添い入院になることは覚悟のうえでした。

 

そして、残念ながら1歳になる前に亡くなってしまったのですが、その時は辛くて辛くて、長女がいなければ私も一緒に火葬してほしいと思ったくらい、目の前が真っ暗になりました。「下の子は使命を終えて帰っていったんだ」そう思わないと立ち上がれませんでしたし、同時に、この経験を通して誰かの役に立つことが、これからの私の使命なんだとも思いました。

 

だから、「キープ・ママ・スマイリング」は私が前を向くための活動でもあるんです。活動を通して、お母さんが喜んでくれると私も本当に嬉しいですし、次女が生まれてきてくれた意味を形にできるような気もしています。

 

 

「おいしい食事」で付き添い入院をサポートしたい

写真提供:NPO法人キープ・ママ・スマイリング

 

ー 「キープ・ママ・スマイリング」では、現在どのような活動を行っているのでしょうか。

 

光原さん:最も歴史が長く、背骨となっているのが、「ミールdeスマイリング」という食事提供の支援活動です。2015年からドナルド・マクドナルド・ハウス(病気の子どものご家族が利用できる滞在施設)にいる方に夕食を作るという活動を始めて、今でも毎月続けています。

 

また、施設内で調理ができないところへは、定期的にお弁当のお届けも行っています。今は聖路加国際病院と東京医科歯科大学病院の小児科病棟ですね。そのお弁当の購入は、寄付金を活用させていただいています。付き添い生活は過酷ですが、だからこそ、「でも、こんなにおいしいご飯が食べられて、むしろラッキー」なんて思ってもらえたら、嬉しいですよね。

 

お弁当は、おいしいと話題の飲食店にお声がけをさせていただき、また、毎月メニューが被らないようにこだわってお届けしています。

 

ー 普段、なかなか買えないお弁当だからこそ、喜ばれそうですね。

 

光原さん:はい、とても喜んでいただいています。なので、全国の付き添い家族の方にもお届けしたいと思ったのですが、さすがに全国にお弁当を持っていくわけにもいかないので、代わりに「キープ・ママ・スマイリング」オリジナルの缶詰を作りました。

 

ドナルド・マクドナルド・ハウスで、メニューの考案や調理スタッフの指導もしていただいているシェフの米澤文雄さんに監修をお願いして、「大豆ミートのキーマカレー」と「にんじんとオレンジの食べるスープ」の2種類を作って。完成後は、テレビ取材をきっかけにご連絡いただいた佐賀大学医学部附属病院の小児病棟にお届けしました。

 

 

ー 光原さんが提供する食事には「おいしさ」へのこだわりが感じられます。そもそも、なぜ食事の支援からはじめようと思ったのでしょうか。

 

光原さん:私自身、食事が一番大変だったからです。入院中はずっと「おいしいご飯が食べたい」と思っていました。

 

「おいしさって大事だな」と改めて実感したのは、長女がICUに入ることになった時のことです。ICUでは泊まり込みができないので、その時、久しぶりに病院の外へ出たんですね。

何気なく入った近所のおばんざい屋さんで、出来たてのご飯を食べた瞬間、とってもおいしくて感動してしまって。夢中で食べていると、「近くに引っ越してきたの?」と大将が話しかけてくれたんですが、事情を話すと「お弁当もやっているから、電話してくれれば病院まで持っていくよ」と言ってくださったんです。

 

お言葉に甘えて、付き添い入院に戻ってからは、お弁当を病院まで持ってきてもらっていましたね。その時、「おいしいご飯を食べるだけで、こんなに心が支えられるんだ」とびっくりしました。

 

「おいしい」ってすごいパワーだと思います。今では私たちも、食事以外にも支援の幅を広げていますけど、やっぱり背骨はおいしいご飯で応援、なんですよね。

 

 

コロナ禍に生まれた「付き添い生活応援パック」

 

ー 食の支援という枠を超えて、今では「付き添い生活応援パック」の無償配付も行っていますよね。この取り組みが生まれた背景を教えていただけますか。

 

光原さん:先ほどのオリジナル缶詰をもっと拡大してお届けしていこうと思った矢先、コロナ渦に突入してしまったんです。そこからは衛生上の観点で、付き添い家族は一旦病院内へ入ると、外に出ることが困難になってしまいました。

 

家族との面会や交代は禁止。一度帰宅すると再び病院に戻ることができないので、家にいる家族にも会えない。なかには、入院中に仕事を辞めざるを得なくなって、経済的に困窮する方もいらっしゃいました。しかも病院によっては、病院内の売店へ行くのも禁止になったり、行けても時間制限が設けられたりと、食べ物さえまともに買えなくなったところもあったようで…。

 

そんな状況下で、何とか付き添いの親御さんたちを遠隔から応援できないかと思って始めたのが、この「付き添い生活応援パック」の無償配付事業です。さまざまな企業様に商品の寄付をご依頼して、2020年10月からお届けを開始し、現在までに累計で約6,200人以上のご家族にお送りしています。

 

写真提供:NPO法人キープ・ママ・スマイリング

 

ー 中身を拝見したところ、生活必需品のほかに、化粧品や癒しグッズなども入っていたのが印象的でした。

 

光原さん:レトルト食品、缶詰、お菓子、マスク、化粧品、調理グッズなど…ありがたいことにたくさんの企業様にご協力いただきました。

 

お母さんの心身をサポートしたいので、ふとした時に自分を取り戻したり、ホッとしてもらえる時間をお届けしたいと思ったんですね。なので、ハーブティーやフェイスマスクなど、病院内の売店では手に入りにくい商品も入れるようにしています。

 

着替えや移動のために、「キープ・ママ・スマイリング」のオリジナルTシャツやトートバッグなども入れているのですが、最近では、院内で同じTシャツを着ている人と仲良くなって「チーム『キープ・ママ』でがんばってます!」といった嬉しい声も届きます。知り合いを作りづらい院内で、付き添い応援パックが孤独感の緩和や会話づくりの役に立っているようで嬉しいです。付き添いしている親御さんたちは同志でもあるので、繋がることで支えられる部分もあると思います。

 

ー 届ける物もひとつひとつ、こだわって選んでらっしゃることが伝わります。

 

光原さん:私たちはこの「付き添い生活応援パック」を、親御さんたちへのプレゼントだと思っているので、入れる物にはすごくこだわっています。食べられればいいとか使えればいいとかではなくて、やっぱり見て使って嬉しいものを!って。なので、私たちも本当に親御さんに届けたい物だけを厳選して入れているんですよ。アマノフーズのフリーズドライおみそ汁もそうです。

 

 

温かいおみそ汁で、ママたちにホッとできるひとときを

(左から、「キープ・ママ・スマイリング」の国武敦子さん、光原ゆきさん、早川真由美さん)

 

光原さん:じつは以前から、アマノフーズのフリーズドライ食品を自分たちで購入して「付き添い生活応援パック」に入れていたんです。病院では調理はできないけどお湯はあるので、手軽に食べられますし、温かい汁物って食事の質をぐんと上げてくれるので。

 

だから、今回アマノフーズさん直々にフリーズドライおみそ汁をご提供いただけることになって、本当に嬉しいんです。現物が事務所に届いた時はスタッフ一同で大喜びでした。自分たちで買っていた時は1個しか入れてあげられなかったけど、今回は、5個入りの商品をご提供いただけたので、きっと喜んでいただけると思います。

 

 

ー「付き添い生活応援パック」を受け取ったご家族からの反響はいかがでしたか。

 

光原さん:おみそ汁はやっぱり人気なようで、「久しぶりにおみそ汁が飲めて嬉しかった」という声をよくいただきますし、なかには「おいしいおみそ汁の塩加減が、汗と涙をたくさん流してきた体に染み渡りました」という声もありました。

 

物への感想だけでなく、「こんなにたくさんの企業の方が、自分を応援してくれているんだと思うと、先が見えない入院生活だけど頑張ろうと思えた」とか、「誰かに気にかけて応援してもらっているような温かい気持ちになりました」といった声もいただきます。企業様や私たちから送った物を通して「応援してくれる人がいる」と心の励みになっているみたいです。

 

親は頑張って当たり前と思われがちですし、付き添っている親御さんたち自身も、そう思っていたりするんですよ。そんなご家族たちに物理的な支援を通して、「頑張っていること知ってるよ、応援しているよ」と伝えることで、親御さんたちの心を支えることができているかなと思います。

 

 

付き添い家族に喜んでほしい一心で、これまでたくさんの支援活動を行ってきた光原さん。しかし、今行っている支援はまだまだ「砂漠に水にすぎない」と光原さんは言います。

 

光原さん:ご飯や付き添いパックをお送りして、喜んでいただけているとは思うのですが、そもそも付き添い入院の環境が変わらない限り、大変なのはずっと続くと思っています。だから、今後は直接支援と環境改善の両輪で、活動していきたいです。

 

直接支援は、面会や短期間の入院の方にも、何かしらの支援ができればと思っています。2024年には日々面会に通うご家族への支援を始められるよう寄付金を集め、準備を進めているところです。ゆくゆくは付き添い家族を全方位で支援できるようにしたいです。

 

環境改善のほうは2023年6月、こども家庭庁と厚生労働省に、付き添い環境改善の要望書を提出することができました。今ようやく動き始めたところなので、成果が出るのは少し先かもしれませんが、ゆくゆくはすべての病院の環境が良くなって、私たちが支援する必要がなくなるのが理想です。そしたら、喜んで団体を解散したいですね。私たちが必要とされている限りは、全力で付き添い家族の皆さんを応援していきます。

 

 

【お話をお伺いした方】

光原ゆきさん
1996年一橋大学を卒業後、株式会社リクルートへ入社。メディアプロデュース、人事業務に従事。2014年11月にNPO法人キープ・ママ・スマイリングを設立、理事長に就任。活動を通じて「病気の子どもを育てる母親・家族全体」への支援をさまざまな形で行う。

NPO法人キープ・ママ・スマイリング公式サイト

付き添い入院を応援する経験者によるクチコミサイト「つきそい応援団」

Instagram(@keep_moms_smiling)

 

 

(取材・執筆/柴田れな 撮影/飯塚麻美)

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